土地探し 法律の基礎知識

土地探しをする際に、最低限知っておきたい法律に「建築基準法」があります。これは、建物を建てる上での様々な決まりごとが定められています。ここでは、その中でも「用途地域」・「建蔽率と容積率」・「高さ制限」・「道路の関係」・「防火」といった、土地を探す上で最も重要な決まりごとについて、簡単に紹介します。
ただし、実際の運用はかなり複雑となっており、不動産業者でも全てを理解している人は稀です。

土地は、建築家と一緒に探すことをオススメします。

≫ 1.用途地域(ようとちいき)
全ての住宅地は、法律によって12種類の「用途地域」に分けられています。 この区分けによって、建築可能な用途の他、建物の高さや密度など、細かく決められていて、地域の特徴や雰囲気が大きく異なります。
土地探しをされる際は、用途地域がどのようなものか、あらかじめ予備知識をお持ちいただくことをお勧めします。
私たちにご相談いただければ、法規に関する概略をご説明させていただくことも可能です。
また、内容がわかりやすく解説されている一般の方向けの書籍などもご紹介いたします。

用途地域 概要 建蔽率(%) 容積率(%)
第1種低層住居専用地域 低層住宅の良好な環境を守るための地域で、小中学校や診療所、小規模の店や店舗を併設した住宅も建てられます。 30
40
50
60
50
60
80
100
150
200
第2種低層住居専用地域 低層住宅の専用地域ですが、床面積150m2以内の店舗も建てられます。
第1種中高層住宅専用地域 3階建て以上の中高層住宅や大学、病院、床面積500m2以下の店舗などが建てられます。 100
150
200
300
第2種中高層住宅専用地域 3階建て以上の中高層住宅に加え、床面積500m2以上の事務所、飲食店などが建てられます。
第1種住居地域 床面積3,000m2を超える店舗や事務所、パチンコホール、カラオケボックス、劇場・映画館などを建てられない地域です。 60 200
300
400
第2種住居地域 劇場・映画館、キャバレー、一定の危険物貯蔵所などの建設を禁じている地域です。
準住居地域 風俗系店舗やキャバレーの建設は禁止されていますが、スーパーマーケットやファミリーレストランなどは建てられる地域です。
この他に、近隣商業地域、商業地域、準工業地域、工業地域、工業専用地域があり、工業専用地域以外は住宅を建てることができます。

各地の用途地域は、右図のような都市計画地図によって調べることができます。都市計画情報は、各行政のホームページでも確認できます。

例)東京都の場合
https://www2.wagamachi-guide.com/tokyo_tokeizu/

自治体によって、ホームページに情報を掲載していない場合もあり、その場合は、各自治体の担当窓口で閲覧することになります。 土地を購入される前に、その敷地だけでなく周辺の状況も調べておくことをお勧めいたします。

≫ 2.建蔽率・容積率(けんぺいりつ・ようせきりつ)


敷地に建てられる建物の面積の最大値は、「建蔽率」と「容積率」によって決められています。

建蔽率とは、その土地に対する「建築面積」の上限を定めたものです。「建築面積」とは、建物を真上から見たとき(柱または壁の中心線でみます)の面積をいいます。

容積率とは、その土地に対する「延床面積」の上限を定めたものです。「延床面積」とは、建物の全ての階の床面積を合計したものです。

「建蔽率」「容積率」は用途地域ごとに定められていますが、敷地・道路・建物の諸条件によって、都市計画地図に記載されている数値より緩和されたり抑制されたりします。特に前面道路幅が12m以下の場合、容積率は特殊な算式によって求めますので注意してください。
土地を決める際は、事前に建築の専門家にご相談されることをお勧めします。

≫ 3.高さ規制

土地に建てられる建物の高さは、様々な高さ規制によって制限されています。
具体的には、以下のような各種規制が存在します。

  • 道路斜線制限
  • 隣地斜線制限
  • 北側斜線制限
  • 日影規制
  • 高度地区規制
  • 地区協定

など

高さ制限が厳しい敷地だと、2階や3階が建てられない場合もあります。 逆に、いくつかの緩和制度も定めらています。 土地を決める際には、あらかじめ専門家に相談されることをお勧めします。

≫ 4.道路との関係


・土地(敷地)は、原則として建築基準法上の道路に2メートル以上接する必要があります。

・道路に見えても、建築基準法で定められている道路としては扱えない場合もたくさんありますので注意しましょう。

例えば、特に古い住宅地などで、私道を介して道路につながっている場合などは、そのままでは家を建てることはできませんので、特に注意が必要です。
また、前面道路の幅が4mに満たない場合は、道路中心線からの距離が2m以内の部分は、敷地として認められません。ご注意ください。
その他、地区によっては道路から1mないしは2mセットバックしないと建物が建てられない規制なども存在します。

≫ 5.防火の規制


特に市街地の場合、防火・準防火地域という規制が定められています。この地域内に建物を建てる場合、それ以外の地域に比べて、より高度な防火性能が必要となり、建設コストにも影響を及ぼすことがあります。

上記の内容には、様々な緩和制度が設けられています。
それらの内容を正しく選択することは、資産価値を最大化するためにとても重要なことです。

平成6年・12年・15年の度重なる建築基準法の改正等により、大幅に容積率や高さ制限の緩和が図られました。
特に、老朽化した住宅やマンションを建て替える場合、以前より大きな面積を建てられるケースも増え、土地活用の観点でとても有効となりました。
一方で、その内容は年々複雑でややこしくなってきています。

≫ 1.地下室の容積率不算入(平成6年改正)
住宅の地下室は、住宅の床面積の1/3までは面積に算入する必要がなく、土地の面積を有効に活用することができます。
ただし、地下室の工事費は、通常の2倍近くの坪単価になりますので、ご注意ください。

≫ 2.ロフト等の容積率免除(平成12年改正)
天井高さ1.4mまでのロフトや収納空間は、その階の1/2までは床面積に算入されません。
これらを有効に活用すれば、「床面積1.5倍の法則」も不可能ではありません。
※こちらの緩和の運用については、行政庁ごとに細かな基準があります。詳しくは行政庁にご確認ください。

≫ 3.駐車場の容積不算入
屋内に駐車場や駐輪場を設ける場合、延床面積の1/5までは容積率に算入する必要がありません。
都心の狭小地の場合は、土地を有効に活用する上で、有効な緩和制度です。
≫ 4.建蔽率の緩和
敷地が2つの道路に面する角地の場合など、一定の要件を満たせば建蔽率が10~20%割増される緩和制度が設けられています。
≫ 5.斜線制限の緩和(平成15年改正)
「天空率」という特殊な計算方法を実施することによって、北側斜線・道路斜線・隣地斜線を緩和することができ、通常より高い建物を建てることができることがあります。
※高度地区と呼ばれる地域に掛かる、北側斜線と類似の高さ規制には適用できません。ご注意ください。

≫ 6.集合住宅の共用部容積不算入(平成9年改正)
集合住宅の共用部(廊下・エントランスホール・階段等)の面積は、容積対象面積に算入されないこととなりました。
この規制緩和により、それ以前の1.2倍程度の床面積を確保することが可能になりました。
≫ 7.総合設計制度(平成15年改正)
都市部の住宅用の大規模建物に関して、敷地に一定以上の空地を設けた場合、容積率が1.5倍まで建てることが認められるようになりました。
≫ 8.昇降機の昇降路部分の容積率への不算入(平成26年改正)
エレベーターの昇降路部分の床面積を容積率に算入しないことが定められました。
≫ 9.地域ごとの容積率緩和
都市部の住宅用の大規模建物に関して、敷地に一定以上の空地を設けた場合、容積率が1.5倍まで建てることが認められるようになりました。