資金計画の基礎知識

住宅を建てる際には、ローンや税金等といったお金に関する知識が必要となります。

住宅ローンについて

住宅を建てる際の資金計画として、一般的には住宅ローンを利用される方が多いと思います。
こちらでは、住宅ローンの基礎知識についてご説明します。

住宅ローンには、さまざまな種類があります。種類・返済方法・時期によって、総負担額は変わってきます。
それらのメリット・デメリットを把握した上で、自分に合ったローンを見つけてください。

≫ 1.住宅ローンの種類
公的ローン フラット35 民間ローン
住宅金融支援機構の融資のほか、財形融資や年金融資などの種類があります。一般的に、利用資格、条件などの制限が比較的厳しく設定されています。
例えば、「財形住宅融資」は、会社勤務で勤め先に財形貯蓄制度がある場合、金利などの点で有利だと言われています。
その他、各地の自治体にも有利な融資制度が用意されています。
民間ローンと公的ローンがタイアップして誕生した証券化住宅ローン。民間金融機関のローン債権を住宅金融支援機構が買い取り、証券化して投資家に販売するという方式。

金融機関のリスクが低いため長期固定・低金利が可能となっています。近年の低金利政策を受けて、「全期間固定型」であるこの方式が、注目されつつあります。

このローンを利用する場合、設計の内容について基準があり、審査を受けて通過する必要があります。建物に対する基準が他に比べて高い分、収入などに関する条件が他より低い傾向が最近ではあるようです。

銀行や保険会社、ノンバンクなど様々な金融機関で取り扱っている住宅ローンを、民間融資といいます。フラット35が、「全期間固定型」という1つの金利タイプしかないのに対し、金利タイプが「変動型」と「固定期間選択型」の2つも扱っています。
金利やその固定期間についても銀行によって様々です。
≫ 2.金利とは?
固定型 変動型 固定期間選択型
全期間適用金利が変わらない。
フラット35などはこのタイプ。適用金利が変わらないため、低金利時に借りれば、将来の金利上昇リスクをヘッジできる。
また、返済額が一定のため、家計管理しやすい。
ただし、金利下降期に借りると、結果的に金利負担が大きくなりトータルの返済額が増える。フラット35Sなどの優遇策も定められている。他のローンでは、団体信用生命保険が金利に含まれているが、フラット35の場合、別途、任意で加入する必要がある。
ただし、団体信用生命保険に代わる、もうすこしお安い保険制度もあるよう。

なお、フラット35の場合、ローン保証料は必要ない。

年2回、短期プライムレートの変動にあわせて金利が見直され、それに基づいて返済額が再計算される。低金利期や金利下降期には低金利メリットを享受できる。
もしも適用金利が上昇を続ければ、それにつれて返済額もアップする。
ただし、5年間は月々の返済額は変わりません。
その間の不足文は、5年経過後以降の返済額に反映されます。なお、たとえ急激な金利情報があったとしても、月々の返済額に反映できるのは、上限で25% までと定められています。
(金利に上限を決めている商品もある。また途中で固定期間選択型に切り替えられる場合もある)
固定期間終了後、金利状況に応じて、固定金利か変動金利か選ぶ。固定期間終了後、金利状況に応じて、固定金利か変動金利か選べる自由度があるのがメリット。
金利上昇が続くと、初めから長期の固定金利にしておいた方が有利な結果になり、金利下降が続くと、初めから変動金利にしておいた方が有利な結果になる。
銀行によっては、固定期間選択型と変動型を何度でも自由に選択できる。(手数料は必要)子供の教育にお金のかかる期間が10年程度の場合などは、金利上昇のリスクを考えて、10年間だけ金利を固定しておいて、その後は変動にするといった方法もありうる。
≫ 3.返済方法は?
元利均等払い 元金均等払い
実際の返済額を、毎月均等に支払う方法。返済期間中、ずっと返済額はかわらない。

返済当初は金利分ばかり返済するので、元金がなかなか減らない。
最終的には総返済額もやや多くなると言われている。

ただし、当初の返済負担を抑えながら計画的に返済できる。

元金を毎月均等にする方法。実際の支払額は、 元金の減少に伴う金利の減少により、徐々に減ってゆく。
元金が多く残っている支払開始期は、金利分の負担が多い。
元利均等払いに比べ、総返済額は少ない。子供がいない共稼ぎの方など、はじめに多く返せる場合におススメ。
≫ 4.お金のスケジュールを知る
注文住宅を建てるには、1年~2年の長い時間がかかります。
その間に様々なタイミングで出費が必要になります。

以下の図は、そのお金のスケジュールを示しています。
ここで注意したいのは、住宅ローンの融資が実行されるのは、建物が完成した後だということです。
従って、それまでに必要な資金に対しては、つなぎ融資を組むなどの方法が必要となります。

なお、フラット35やフラット35Sの場合、金融機関によってはつなぎ融資をしていない場合があるので、注意が必要です。
つなぎ融資を使わない方法として、「すまいとMoney Plan」という出来高払いのシステムもあります。

土地を先に購入する場合、土地取得から2年以内に建物が完成していないと住宅ローン減税が受けられないといったことにも注意が必要です。
また、フラット35やフラット35Sを利用して土地を先行取得する場合、銀行によっては、土地取得時に工事請負契約や適合証明を求めてくる場合もありますので、それが無くても対応してもらえる銀行を探す必要があります。
他にも、土地取得から建物竣工まで1年以内という条件などを設けている銀行もありますので、ご注意ください。

流れ 出費 ローン
土地探し 住宅ローン打診
土地売買契約締結 土地手付金・手数料 融資の申請
土地の引き渡し 土地代金の残金

竣工までは、
つなぎ融資で資金を調達

(土地取得後、2年以内に竣工しないと、原則として住宅ローン減税は受けられませんので、注意が必要です。)

設計・監理契約締結 設計・監理料の1/3
工事請負契約締結 設計・監理料の1/3
工事代金の1/3
上棟 工事代金の1/3
竣工引き渡し 設計・監理料の1/3
工事代金の1/3
ローン実行手続き ローン諸費用・登記・火災保険・引越し代等 住宅ローンの実行

住まいづくりに関わる税金と減税・節税について

家を新築すると、その他に様々な税金が必要になります。
家を建てる際、あるいは建てた後で、その請求内容にビックリしないよう、必ずチェックしておきましょう。
なお、ここでの説明はあくまでも概要です。詳しくは各省のHPなどでご確認いただくか、税理士その他の専門家にご相談ください。

≫ 1.登録免許税
所有権保存登記

住宅を新築した場合、所有権の保存登記が必要です。なお、これらの手続きは、司法書士の方にご依頼いただくことになります。
税率は、0.4%です。(平成32年3月31日までは、0.1~0.15%とする軽減措置が設けられています。) くわしくは下記の国税庁のページをご覧ください。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm

抵当権設定登記

家屋の取得資金の貸付け(ローン)等を受けた場合、抵当権の設定登記も必要です。通常、銀行が手配することが多いようです。
必要であれば、司法書士の方にご依頼いただくことになります。

土地所有権移転登記

住宅を新築した場合、所有権の保存登記が必要です。なお、これらの手続きは、司法書士の方にご依頼いただくことになります。
税率は、0.4%です。(平成31年3月31日までは、0.15%とする軽減措置が設けられています。)

建物表示登記

建物を新築された場合、「建物表示登記」が必要となります。
登録免許税は不要ですが、土地家屋調査士に依頼する場合はその報酬が必要です。
登記申請は新築してから1ヶ月以内に申請することが法律により義務付けられております。

建物滅失登記

家屋の解体が必要な場合は、「建物滅失登記」が必要となります。

≫ 2.不動産取得税
土地を購入し、家屋を建築するなどして不動産を取得したときに、登記の有無にかかわらず不動産取得税を納める必要があります。
(ただし、相続により取得した場合には課税されません。)平成27年 3月31日までの間の税率は、土地・家屋とも、評価額の3%です。
ただし、家屋部分に関しては、一般住宅の場合、1200万円の控除が受けられます。 ※不動産取得税に関しては、減免を受けるための申告手続きが必要です。ご注意ください。
※詳細については、たとえば東京都の場合、以下のページをご参照ください。
http://www.tax.metro.tokyo.jp/shisan/fudosan.html#gaiyo_03
※具体的な金額がわかる、シュミレーションサイトもあります。
http://www.tax.metro.tokyo.jp/shisan/syutokuzei.html
※納税の時期 納税通知書到着後に行う必要がありますが、その一般的な送付時期は、取得(所有権移転の登記)をしてからおおむね4~6ヶ月後になります。
また、住宅を新築した場合などは、価格等を決定する手続きが必要となりますので、さらに時間がかかります。
≫ 3.固定資産税
固定資産税は、毎年1月1日現在において所有する、不動産(土地・家屋)及び償却資産(駐車場舗装・フェンスなど)の所有者に課せられる、地方税です。

税額(円)= 固定資産税課税標準額×1.4%
※固定資産税課税標準額は、総務大臣の定める評価基準に基づいて算定されます。
〔土地〕
固定資産評価基準に基づき、地目別に定められた評価方法により評価します。
住宅用土地については、特例として次に掲げる軽減措置があります。
※住宅用地については、課税標準の特例措置が講じられています。
・小規模住宅用地(一戸あたり200㎡以下の部分) :課税標準となるべき価格の6分の1
・一般住宅用地(200㎡を超える部分)      :課税標準となるべき価格の3分の1
〔家屋〕 固定資産評価基準に基づき、再建築価格を基準に評価します。

評価額 = 再建築価格 × 経年減点補正率

※再建築価格とは、評価の対象となった家屋とまったく同じものを評価の時点に新築するものとした場合に必要とされる金額です。
※経年減点補正率とは、家屋の建築後の経過によって生ずる損耗の状況による減価等をあらわしたものです。
※一定の用件にあてはまる新築住宅については、120㎡分を限度として固定資産税額(家屋部分)の2分の1に相当する額が一定の期間(一般住宅は3年間)減額されます。
※詳しくは、東京都の場合以下のページをご覧ください。
http://www.tax.metro.tokyo.jp/shisan/kotei_tosi.html

≫ 4.都市計画税
都市計画法に定める都市計画区域のうち、市街化区域内にある土地と家屋に課税されます。(市街化調整区域にあるものは課税されません。)

こ税額(円)= 都市計画税税課税標準額×0.3%

※都市計画税課税標準額は、総務大臣の定める評価基準に基づいて算定されます。
※住宅用地については、課税標準の特例措置が講じられています。
・小規模住宅用地(一戸あたり200㎡以下の部分):課税標準となるべき価格の3分の1
・一般住宅用地(200㎡を超える部分)     :課税標準となるべき価格の3分の2
※詳しくは、東京都の場合以下のページをご覧ください。
http://www.tax.metro.tokyo.jp/shisan/kotei_tosi.html

なお、住宅の建設に関しては、政府経済対策の一環として、さまざまな減税・節税のメニューが整備されています。
家に関する税金は、決して小さな金額ではありません。しっかり計画・対策を建てることが必要です。

≫ 1.住宅ローン減税
住宅ローンを借りて家を買うと、所得税等が帰ってくる制度です。
平成26年からの住宅ローン減税は、控除期間は10年間で、最大控除額は一般住宅で400万円です。
また、それまでは国税の所得税だけが減税対象でしたが、新たに地方税の個人住民税も減税対象になりました。
住宅ローン減税による控除額のうち所得税から控除しきれない額は、住民税からも控除されるため、多くの人が減税の恩恵にあずかれる制度となっています。
適用対象となるのは平成33年までに入居した人です。
さらに、長期優良住宅の場合はさらに手厚い減税策が設けられています。

くわしくは下記のページをご覧ください。
http://sumai-kyufu.jp/outline/ju_loan/

≫ 2.贈与税の軽減
直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税

平成27年1月1日~平成33年12月31日までの時限措置として、20歳以上の人が直系尊属(親・祖父母等)から 住宅取得等資金に充てるための贈与を受けた場合の、贈与税の非課税措置が拡充されます (ただし、贈与を受ける方のその年の合計所得金額が2,000万円以下であることが要件となります)。
従来は、暦年課税制度を適用し父母などから住宅取得のための資金の贈与を受け住宅を取得した場合、 贈与税非課税枠は500万円で、基礎控除額110万円と併用して610万円までが非課税となる特例でしたが、この度その非課税枠がさらに拡大されています。
平成24年1月1日から平成26年12月31日までの間の受贈者1人についての非課税限度額(注1)は、原則として次のとおりとなります。
(1) 省エネ等住宅(注2)の場合

最初に非課税の特例を受けようとする住宅取得等資金の贈与を受けた年に応じて、次の金額が非課税限度額となります。
平成31年度のときは1200万円
平成32年度のときは1200万円
平成33年末までは800万円
※上記期間においても、消費税が10%の場合は、さらに非課税限度額が拡充されます。

(2) (1)以外の住宅の場合

最初に非課税の特例を受けようとする住宅取得等資金の贈与を受けた年に応じて、次の金額が非課税限度額となります。
平成31年度のときは700万円
平成32年度のときは500万円
平成33年末までは300万円
※上記期間においても、消費税が10%の場合は、さらに非課税限度額が拡充されます。

(注1) 既に非課税の特例の適用を受けて贈与税が非課税となった金額がある場合には、その金額を控除した残額が非課税限度額になります。
(注2) 「省エネ等住宅」とは、省エネ等基準(1断熱等性能等級4若しくは一次エネルギー消費量等級4以上であること、1耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)2以上若しくは免震建築物であること又は1高齢者等配慮対策等級(専用部分)3以上であること)に適合する住宅用の家屋であることにつき、一定の書類により証明されたものをいいます。

なお、この非課税となった金額は、贈与者が死亡したときのその贈与者に係る相続税の計算において、相続税の課税価格に加算されません。
つまり、相続時精算課税制度のように、贈与財産が相続時に加算されるものでないため、贈与税も相続税もかからないということです。
この非課税制度を利用するためには、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに贈与税の申告書及び添付書類を提出する必要があります。

詳しくは、以下の国税庁のページをご参照ください。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4508.htm

≫ 3.相続時精算課税制度
家を買う際、親から満20歳以上の子に対し住宅取得等資金の贈与をし、子が相続時精算課税制度の適用を受ける場合に、先述の非課税枠に加え2,500万円の特別控除額までは贈与税は課税されないという制度です。
また通常の相続時精算課税に加え、住宅取得に関しては、親の年齢制限はありません。
(通常の場合、65歳以上)
この制度のメリットは贈与税がかからないことです。負担が少なく、子供に資金が移転できます。この制度を利用して、住宅ローンの借入金による支払利息を減らせば、総返済額を大幅に減らすことも可能です。
デメリットはこの贈与分は相続時に相続財産に加算されます。それも贈与時の価額で加算されます。贈与税は安いが相続税が高くなるということです。
この制度を利用して有利な人は相続税の計算時に今回の贈与分も加えた相続財産が基礎控除= 3000万円+法定相続人×600万円までにいかない方です。 そうでない場合は、暦年贈与を検討してもよいかもしれません。

詳しくは、以下の国税庁のページをご覧ください。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4103.htm

≫ 4.3000万円特別控除
自宅を売却して利益(譲渡所得)が出た場合、譲渡所得から最高3000万円までの控除ができる特例です。
この特例を使うと、「住宅ローン控除」は使えないという点に注意が必要です。
ただし、住宅を売却した際の譲渡益に対する税金が、住宅ローン控除を10年間受けた場合の合計金額よりも大きい場合は、3000万特別控除を利用した方が有利です。

詳しくは、以下の国税庁のページをご覧ください。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm

≫ 5.名義共有・財産分与・持分比率
贈与税や相続税を節税する方法として、共有名義という方法もあります。
これは、親に資金援助をしてもらって、その負担割合に応じて共有登記するというものです。
この場合は、贈与税はかかりません。
また、家屋の評価額は現金よりも圧縮される上に減価してゆくために、相続税対策としても有効です。
なお、夫婦間で互いに出資する場合も、その比率に合わせて登記する必要があります。