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Fit建築設計事務所のブログ

オクシモロン(※)シリーズ第2段です。
 建築メディア上で大きな話題になるプロジェクトには、ひとつの共通点が見られるように思います。それは、「汎用できない汎用性」をもっているかどうかということです。
例えば最近では、「イエノイエ」という横浜でのイベントにおける、平田晃久氏の住宅モデルが注目され話題になっています。このプロジェクトの面白さは、何と言っても汎用性の高さではないかと思います。藤本壮介氏の9坪ハウスや、今年のグッドデザイン金賞を取った隈研吾氏と無印良品による「窓の家」など、最近流行りの「家型」シルエットの住宅を、平面的にいくつかくっつけたようなプランになっています。このシステムにあてはめると、様々なプランニングに対応できるという意味で、大きな可能性を秘めています。
 
 一方で、建築における「一般性」は、その内容を研ぎ澄ませば研ぎ澄ませるほど、オリジナリティが出てくるという面白さを併せもっています。「イエノイエ」の場合、一部屋ごとの家型をいくつか組み合わせて汎用性を高めているにも関わらず、オリジナリティあふれる特徴的な外観を獲得しています。そして一旦オリジリティを獲得してしまった時点で、他の建築家はそのシステムを汎用できなくなってしまいます。なぜならば、それがオリジナルの模倣にすぎなくなってしまうから。同様のことが、例えば「せんだいメディアテーク」でも言えると思います。決して他者がマネのできない、すなわち汎用できないほどのオリジナリティが生まれるまで、システムの一般性を研ぎ澄ますこと。
 
少なくとも私自身は、そういうことに魅力を感じる気がします。ところで、この設計手法は、一般性を追い求めるあまり、建築に必要な土着性や風土性を見失ってしまう危険性をはらんでいることも、忘れてはならない気もします。
(※)オクシモロン:パラドックス(逆説)の一形態。ギリシア語のoxy(鋭い、賢い)とmoron(鈍い、愚かな)を合成して作られたことば。矛盾撞着語法と訳される。

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